脳腫瘍の男④

術後、彼は頭痛もなくなり体もぴんぴんしていました。何の症状も出ません。痛くも痒くもないから退院したいと男は医者たちに言いました。

 

医者たちは見たこともない彼の腫瘍の研究がしたくて堪りません。何せ、初めて発見した脳腫瘍。 エメラルドグリーンの液体を今研究医が調べているところ。 正直な話。彼は手放したくない患者でした。 引き留めていたいのです。

 

でも、確かに彼は健康そのもので、症状も出ないし、腫瘍が悪影響を及ぼしているわけでもないのに無理矢理入院させておくのも、可笑しな話です。

 

彼の言う事も尤もだ。 ここに縛り付けておく理由が無い。 仕方ないので退院を許可しました。 「ただし、週に一度必ず通院するようにしてください。」 彼は承知し、無事退院出来ました。 

 

彼は仕事に復帰しました。そして言われた通り週に一度、病院に通いました。

 

そんなある日のこと。

 

医者達は待っていたようで、病院の受付まで集まってきました。「研究中だが、物凄い事がわかったんです。 とにかく今日から入院してください。」

 

男は「え、また入院?僕、今元気ですよ。」 と応えました。

 

「実はあなたにはお願いがあるんです。 あなたの脳腫瘍をもっと研究したいんです。 人助けになるんです。 とにかく色々な方向から研究してみました。 片っ端からマウスにあなたの脳腫瘍の分泌物を注射したんです。色々判ったのですが、まず、判りやすいことを言いましょう。 癌やエイズウイルスにかかったマウスがあなた脳腫瘍の分泌物を注射したらばですね・・・・ 治っちゃったんです! 分泌物の量のことも考えて、わずかばかりしか、研究できませんでしたが、致命的な病気のマウスも見事に治ったんです。 

 

この研究が成功すれば癌患者やエイズ患者も治せる薬が作れるんです。 あなたが協力してくれれば、沢山の命が救われるんです!」

 

 

彼自身もびっくりしました。 「沢山の苦しんでる人が僕の脳腫瘍で助かるんだ。 」

 

彼は研究に協力することにしました。 会社には医者の方から伝えるからと、言われ、彼はその日に入院しました。 

 

つづく