脳腫瘍の男 25話

脳腫瘍の男。25話。

朝帰りした脳腫瘍の男

別荘では政界のドンがリビングのソファに腰掛けにやにやして待っていました。

『朝帰りとはな~。
お前さんもやるな~』

脳腫瘍の男は顔から火が出そうです。
『あの、その、。』どもりながら、説明しようとすると

政界のドンは『なんだ。
真っ赤になって。
冗談でからかっただけだ。
もしや、まさか彼女と
あれか?』
立ち上がり脳腫瘍の男の顔を覗きこんで聞きました。
『お前さん、彼女とセックスしたのか?
アソコ起ったのか?』

脳腫瘍の男は政界のドンのストレートな質問をかわす事も出来ず、小さく頷きました。

政界のドンは
『やったな!
めでたい!
今日は祝いだ。
赤飯だな』と、はしゃぎ出しましたが、ふと我にかえり
『赤飯はないか。』と大笑いして恥ずかしがる脳腫瘍の男の背中を叩きました。

はしゃいだものの政界のドンの心の中は複雑でした。
脳腫瘍の男の恋した彼女は癌で、あと数カ月の命です。
政界のドンは脳腫瘍の男が悲しむ姿を見たくないのです。
それでも、これから先待ち受けてる悲しみと向き合わなければいけない。
政界のドンは、また、わざと子供のようにはしゃいで脳腫瘍の男をからかいました。

仮眠をしようにも脳腫瘍の男は全く眠れません。
夕方、居てもたってもいられず
脳腫瘍の男は彼女に会いにホスピスに行きました。

彼女の部屋に行くと、そこには誰も居ませんでした。


彼女も彼女の荷物も何もかも消えていたのです。

続く